歯ぎしりや食いしばりは、日常生活におけるさまざまな要因によって引き起こされます。ストレスや精神的な緊張、咬み合わせのズレ、生活習慣などが関与しているとされますが、放置すると以下のようなリスクが生じることがあります。

1. 歯の摩耗（咬耗）
歯の表面は人体で最も硬い「エナメル質」で覆われていますが、歯ぎしりや食いしばりが慢性化すると、歯同士の強い接触により徐々にすり減ってしまいます。この現象を「咬耗（こうもう）」と呼びます。歯科医院では、咬耗の程度や咬合面（噛み合わせの面）の状態を診ることで、歯ぎしりや食いしばりの有無を診断することができます。

2. 知覚過敏のリスク
エナメル質が摩耗し、内部の象牙質が露出することで、神経に刺激が伝わりやすくなり、冷たいものや熱いものに対して「しみる」症状が現れやすくなります。これがいわゆる知覚過敏であり、放置すると症状が悪化し、日常生活に支障をきたすこともあるため、早期対応が望まれます。

当院では、知覚過敏の症状を和らげるために、弱いレーザーを歯のしみる部分に照射する治療を行っています。レーザーを当てることで歯の表面に薄い保護膜が形成され、神経への刺激を遮断しながら歯を守る働きが生まれます。この処置は、しみる症状を軽減すると同時に、むし歯の進行を防ぐ効果も期待できます。

3. 歯周病の進行悪化

歯周病は、細菌感染によって歯茎や骨などの歯周組織が破壊される病気ですが、歯ぎしりや食いしばりによる過剰な力が加わることで、症状の進行が加速する場合があります。すでに歯周病が進行している場合は、歯がグラつきやすくなり、歯の喪失リスクが高まります。さらに、「咬合性外傷（こうごうせいがいしょう）」と呼ばれる、噛む力による外的ダメージも起こり得ます。

4. 顎関節症の原因に

歯ぎしりによる強い噛みしめや顎の動きは、顎関節に過度な負担をかけます。その結果、顎関節に炎症が起こり、痛みや開口障害、顎が鳴る（関節雑音）などの症状を引き起こす「顎関節症」へとつながることがあります。進行すると、口が開けづらくなったり、頭痛や肩こりを伴ったりすることもあります。

5. 歯並びや噛み合わせの悪化

慢性的な歯ぎしり・食いしばりにより、歯には常に過剰な咬合圧がかかることになります。その結果、歯が移動してしまい、すき間ができたり、噛み合わせがずれたりすることで、見た目のバランスが崩れるだけでなく、しっかりと食べ物を咀嚼できなくなることもあります。さらに、歯磨きがしにくくなることで、むし歯や歯周病のリスクも高まります。